漢方豆知識
2020.10.15

低気圧女子

10月に入り天候が不安定になってきましたが、一緒に体調も不安定になる方が増えています。

低気圧が近づくと「頭が痛くなる」「体がだるくなる」「めまいがする」、そんな女性を名付けて「低気圧女子」というそうです。なんでも〇〇女子と付ければいいというものではありませんが、実際のところ低気圧の影響を受ける方の8割は女性と言われています。

低気圧の影響を受けて起こる体調不良を、気象病ともいいますね。

気象病はなぜ起こるのでしょうか。

気象病のメカニズムに関する研究で、内耳にある前庭神経核細胞という細胞が、気圧変化に反応することが分かってきました。内耳は体の平衡感覚を司っており、異常がおこるとめまいや吐き気などの症状を誘発します。めまいで知られるメニエール病では、内耳にリンパ液の増加(むくみ)が起こっていることが知られていますが、気圧低下によっても一時的に同様のことが起こるようなのです。このため、気象病でめまいの後に頭痛が起こるタイプの方に対して、めまいのお薬を飲んで頭痛も抑えてしまおう、という治療が試みられています。

漢方で頭痛の原因を考えると、水滞(すいたい)、冷え、熱、上衝(じょうしょう)、瘀血(おけつ)など漢方独特の病態が上がってきますが、このなかの水滞は低気圧と関連があります。水滞とは文字通り体の水分の滞りなのですが、気圧低下により頭蓋内に水分の偏りが生じることがあり、これによって頭痛やめまいが誘発されるのです。

気圧とは空気の圧力ですが、この圧力は自然のサポーターのように私たちの筋肉を支えて、シャキッ!とさせてくれています。なので気圧が下がってこのサポーターがゆるむと、筋肉内に収まっていた水分が溢れてきて、むくみ、重だるさ、ひいてはめまい・頭痛といった不快な症状を引き起こすことがあるのです。根本的な解決策は筋肉量を増やして気圧サポーターが要らない体にしていくことですが、一朝一夕ではかないませんね。そこで漢方薬で溢れてきた水を処理する、そんな治療を行って症状をとっていきます。

「低気圧女子」は最近のトレンドのようで、雑誌などで漢方薬が紹介されている記事も見かけます。テレビで「テイラック」というお薬のコマーシャルを見ましたが、これも漢方薬ですね。気象病に用いる漢方薬はいくつか種類があり、その方の体質により使うべきお薬は異なります。症状の重い方は一度漢方医に相談してみるといいですね。(しのぶ)