雑記
2020.09.16

人生を幸せにするものは何?
最も長期に渡る幸福の研究から

2012年4月から2018年3月までNHKで放送されていた「アイデアが世界を変える~TED究極のプレゼン~」、覚えていらっしゃるでしょうか。アメリカのプレゼンイベント「TEDカンファレンス」を放送していたものですが、とても面白い番組でしたね。

いろいろ印象に残るプレゼンはありますが、ひとつ取り上げるなら、ハーバード大学の「史上最も長期間にわたって人を追跡している研究」についてプレゼンした、ロバート・ウォールディンガー教授の回は興味深いものでした(下にリンクを貼っておきます。日本語を選んでご覧ください)。

医学には「疫学研究」という分野がありますが、これは特定の人間集団を長期間観察することで、なにが人の健康・不健康をつくるのか明らかにしようとするものです。日本では1961年から続く「久山町研究」が有名で、住民検診の結果などから脳卒中・心疾患・がん・高血圧・糖尿病・認知症などの原因究明を行っています。

久山町研究も約60年間継続している貴重な研究ですが、ハーバード大学が行っている研究が始まったのは1938年とさらに古く、80年以上の長期に渡っています。プレゼンは今もインターネットで見ることができますので詳細は割愛しますが、この研究ではハーバード大学の卒業生とボストンの貧困家庭に育った少年を合計724人登録し、仕事や家庭生活、健康状態などをインタビューや診療記録を元に観察し続けてきました。

放送の時点で少年たちは80歳代になっていましたが、「健康で幸せな80歳代を迎えた人は、50歳の時にどんな状態だったのか」というのがプレゼンのテーマです。とても興味深い!。最近「長生きしたい」という方は少ないですが、「健康」や「幸せ」は大きな関心事ですよね。

さて、気になるその答えは、コレステロール値が低いとか、仕事で成功していたとかいうことではなく、「良い人間関係を持っている」でした。40歳代のときに、家族や友人関係に限らず、コミュニティにおいて良好な人間関係を築いていた人が、健康で幸せな老後を迎えていたということです。

ここには残念ながら職場の人間関係は入っていません。定年を迎えても終わらない、生涯に渡る人間関係の基礎を40歳代で築くこと、が大切なのだと思います。そして、この事実は生活環境や職業などによらず普遍的で、誰でも今日から取り組める点が素晴らしいと思いました。

実は私、今月50歳になったのです。このプレゼンを見てから、人との関係をより意識して40歳代を過ごしてきましたが、50歳代もこのテーマは変わりません。

そして、今日患者さんとお話ししていて、良い人間関係を築ける=周囲の人にいつも感謝できる=幸せな人生、だなぁと実感することがありました。意識して「ありがとう」を伝える、そんなところから始めてみてもいいかもしれません。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(しのぶ)