漢方豆知識
2026.03.07

パニック障害の2タイプ:リスとワンコ

パニック障害とは、予期せぬ瞬間に激しい動悸や息切れ、めまい、強い恐怖(パニック発作)が繰り返し起こる疾患です。検査をしても体に異常は見つかりませんが、脳の警報装置である扁桃体が過剰に反応してしまう「脳の誤作動」と言われています。

そして、その誤作動を引き起こす背景には、その方の生き方や気質が深く関わっていますが、患者さんを拝見していると、その現れ方には大きく分けて二つのタイプがあるなーと感じています。

一つは震える「リス」のような森の小動物タイプ、もう一つは見張り番「ワンコ」のような正義感タイプです。

1. 臆病な「リス」タイプ

物音一つにビクッとするリスのように、もともと「気(エネルギー)」を蓄える器が小さく、不安に呑み込まれやすい状態です。このタイプの方は体格的にも小柄で、漢方で言うところの「虚証」タイプになります。

臓腑的には決断を司る「脾」と、精神の中心である「心」がパワー不足に陥っていると考えます。ちょっとした体調の変化に敏感でクヨクヨと悩みやすく、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安に怯えてしまうのが特徴です。

漢方的アプローチ: 枯渇した気を補い、器をどっしりと安定させることが先決です。

代表薬: 『帰脾湯(きひとう)』や『加味帰脾湯』。血(けつ)を補い、心に栄養を与えることで、「なんだ、大丈夫だ」という安心感を育てていきます。

2. 正義感の「ワンコ」タイプ

「物事はこうあるべき」と無意識のうちに周囲を監視し、ルール違反を許さないワンコタイプ。これは怒りをコントロールする「肝」の気が滞り、熱を持って爆発している状態です。その正義感は自分自身までも抑圧し続け、ある日突然、脳の警報器がショートしてしまいます。このタイプの方の体格は割としっかりしていて、漢方的にはいわゆる「実証」タイプの方が多い印象です。

発作を起こす自分を鞭打ち、「もっと頑張らなくては」と悪循環に陥っています。

漢方的アプローチ: パンパンに張った気の風船から、適度に空気を抜いて「疎通」を良くします。

代表薬: 『四逆散(しぎゃくさん)』や『加味逍遙散(かみしょうようさん)』。滞った気を流し、イライラや緊張による「熱」を冷ますことで、肩の力を抜いていきます。

養生の鍵は「自分への解釈」

パニック発作は、あなたの心が「もうこれ以上は無理だよ」と命を守るために鳴らしている非常ベルです。

リスタイプの方は「怖がっている私も大切なわたし」と自分認めること、ワンコタイプの方は「わたしの正義だけが正解じゃないかも」と自分を緩めること。

漢方は、そのベルの音を力ずくで止めるのではなく、ベルが鳴らなくても済むような「穏やかな土壌」を整えるお手伝いをします。

もしあなたがどちらかのタイプで苦しんでいるなら、まずはご自身の「気」の癖を知ることから始めてみませんか。