漢方豆知識
2026.02.19

漢方薬は「卒業」を目指すもの―サプリメントとの違い

「調子が良いので、漢方薬を減らしましょう」 、そう患者さんにお話しすると、「体調がいいからずっと続けてはダメですか?」と聞かれることがあります。体調が良くなると、今度はお薬をやめるのが怖くなる。そのお気持ちよく分かります。

でも、漢方治療はやめても好調を持続できるからこそ価値があるもの。また、サプリメントとは違って体によさそうだからとやみくもに飲むものでもありません。

今回は、漢方薬とサプリメントの違い、当院が大切にしている「漢方薬の出口戦略」についてお話ししようと思います。

1. 「補う」サプリと「立て直す」漢方

サプリメントは日本語で「栄養補助食品」と呼ばれます。その名の通り、不足しているビタミンやミネラルを外から「補う」のが主な役割です。食事で足りない分を足し続ける、いわば「足し算」の考え方といえますね。今の時代はいろんなサプリメントのコマーシャルで溢れていますが、SNSでも口コミでも勧められるままに何種類も飲んでしまって、収集がつかなくなっている方も時折り見受けます。ここがサプリメントのちょっと怖いところですね。栄養補助「食品」だからといって、飲みすぎては内臓に負担がかかってしまいます。

一方、漢方薬は「医薬品」です。 その役割は、単に足りないものを足すことではありません。体の中で滞っている「気・血・水」の巡りを整え、五臓六腑のバランスを調整することで、あなた自身が本来持っている「治る力(自然治癒力)」を呼び覚ますことにあります。

2. 漢方薬には「終わり」がある

サプリメントは「健康維持のためにずっと飲み続ける」という方が多いですが、漢方薬は本来、体調が良くなれば中止していけるものです。

漢方治療のゴールは、薬を飲み続けることではありません。

  • 冷えが取れて、自力で体温を維持できるようになった
  • 胃腸が整い、食事からしっかりエネルギーを作れるようになった
  • 気力が充実し、多少のストレスでは動じなくなった

 

このように体質そのものが底上げされれば、漢方薬からの卒業が見えてきます。ただ、このためには食事内容の変更、運動など生活習慣の見直し=「養生」も欠かせません。養生がしっかりできれば、漢方薬から卒業した後も快適な状態が長続きします。

3. あなたの「今の状態」に合わせる

また、漢方薬はその時のあなたの体調(証)に合わせて処方する、オーダーメイドの治療です。体が整ってくれば、当然、必要な処方も変わります。漫然と飲み続けるのではなく、体の変化を一緒に確認しながら、段階的に薬を減らしたり、より軽いものへ切り替えたりしていく。このプロセスこそが漢方治療の醍醐味です。

「それならやっぱり一生飲み続けなければならないのでは?」と不安に思う必要はありません。体が必要としなくなると自然に飲み忘れが増え、漢方薬から自立し始めたことに気がつくはずです。なかには漢方薬が生活の一部になり、飲み続けることで調子を保っている方もいらっしゃいますが、このような場合は、血液検査など副作用のチェックをしながら漢方薬が負担になっていないか注意深くみていきます。

サプリメントと違い漢方薬はこのように医師の伴走を前提として利用するもの。当院ではサプリメントに関するアドバイス(整理)も行っています。ご自身の健康に自信が持てないとき、漢方薬を始めるかどうかに関わらず一度ご相談いだければと思います。