感染
2025.12.08

風邪(インフルエンザ)の漢方薬の選び方、効かせ方

今年の冬はインフルエンザの流行が凄まじい勢いでやってきて、新型コロナはあまり見かけない状況が続いています。

インフルエンザは寒気、節々の痛みか来たかと思ったら、一気に高熱が出るのが特徴です。一般的に5日間程度で熱は下がりますが、その後に咳や喉の痛み、倦怠感などが残り体を消耗させます。インフルエンザはタミフルなどのお薬がありますので、ご希望の方には当院でも処方していますが、かかってから2日以上経って内服してもほとんど効果がありません。インフルエンザウイルスが全身に広がってからでは遅いのです。風邪もインフルエンザも「かかったかも?」くらいで手を打つことが重要です。

では、インフルエンザの西洋薬と風邪の漢方薬の効き方はどのように違うのでしょうか。

インフルエンザのお薬、タミフルを例に挙げれば、これはインフルエンザウイルスが細胞から抜け出して増殖する際に必要な「ノイラミニダーゼ」という酵素の働きを阻害することで、ウイルスの増殖を抑え、症状の回復を早めるお薬です。逆から言えば、原因のウイルスに働きかける薬なので、症状がどうであろうが、熱があろうがなかろうが、検査で陽性であれば関係なく処方されます。

一方、漢方薬はインフルエンザを含め風邪のウイルスが体の奥に侵入する前に体温を上げて、ウイルスを撃退するお薬です。風邪のとき薬がなくても熱は上がりますね。これはウイルスを撃退するために備わった生理的な反応ですが、この反応を助けることで一気に風邪を治してしまうのが漢方薬の戦略です。なのでウイルスが体の奥まで入ってしまうと話が変わってきてしまいます。この意味では漢方薬もタミフルと同じで、かかったと思ったらすぐに飲むのが肝心ということになります。ただ、西洋薬と違うのは、現れている風邪の症状によって使うお薬が違ってくる点です。

風邪(インフルエンザ)のときもすぐ当院を受診して頂ければ、適切なお薬を処方して、適切な飲み方を指導させて頂くのですが、完全予約制である関係上、なかなかそういったご対応ができません。そこで今回は、非常にざっくりとですが、薬局で市販されている漢方薬を使った対処法をご説明します。

あとその前に一つ大事な点ですが、風邪などで漢方薬を内服している間は普段飲んでいる漢方薬はお休みしてください。これには2つ理由があります。一つは薬の力を風邪に向けて集中させるためです。例えば普段から体を熱を冷ます漢方薬を内服していた場合、体を温めたい風邪の漢方薬と体を冷ます漢方薬が拮抗してしまいうまく効果が発揮できなくなります。もう一つは同じ生薬の重複を避けるためです。例えば甘草という生薬は内服量が多すぎると血圧が上がるなどの副作用が生じてしまいます。内服をやめれば元に戻りますが、副作用は避けるに越したことはありませんね。

さて、では具体的にご説明していきますね。

①漢方薬を飲むタイミング

背中がゾクゾクっとした時です。皮膚がゾワゾワした感じ、熱が出そうな予感がする、喉が引っかかる感じがある、そのくらいの症状でもう飲んでください。咳や鼻水、頭痛など風邪の典型的症状がなくても構いません。風邪かどうか迷ったら飲む、という位の前のめりな態度でいいと思います。もし、体を温めようとお風呂に浸かってもまだ寒い、というときは迷わず飲んでください。

②漢方薬の選び方

ドラッグストアでよく見かける風邪の漢方薬は、麻黄湯、葛根湯、小青龍湯でしょうか。気の利いたところなら麻黄附子細辛湯や桂枝湯もありますね。

どの薬を選ぶか本当は明確な判断基準があるのですが、ややこしくなるので思い切って省きます。

子供→麻黄湯

大人→葛根湯

高齢者→麻黄附子細辛湯

寒気がした日はこれでいいです。

大人って何歳から何歳?とか細かいことは気にしなくていいですが、もう一少し付け加えるなら、

ふだんから元気でよく食べて疲れ知らずだ→麻黄湯

元気いっぱいというほどじゃないけど体力はある→葛根湯

体力の衰えを感じることが多い→麻黄附子細辛湯

そして、一番大切なのが飲み方です。これは薬によってちょっと違うのでそれぞれ説明します。

③麻黄湯・葛根湯の飲み方

薬局でこれらの漢方薬を見つけたら、成分表示を確認してください。どちらも麻黄という生薬が入っていますが、これが2gとか2.5gと書いてあったら、それは病院で出す漢方薬の半量で作られた商品です。いろんな事情でそうなっているのでしょうが、一晩で風邪を治す、という今回の趣旨からすると用法どおりに飲んでも…。私ならまず1回分として倍量(病院での処方量)で飲みます(お子さんの場合は年齢に応じた量の病院処方量で)。

市販の漢方薬の用量用法の欄には「1日2包を食前に水かお湯で服用」と書いてあります。これもちょっと…。私が飲むなら「ゾクっと来たときに2包(病院処方の1回分)、30−40分待って汗が出てこなかったら、もう2包追加。必ずお湯で服用」です。

風邪の漢方薬は期を逃さずに体温が上がって汗をかくまで飲む、これがキモですから、食前とか気にしないで一度に2包飲みます。水で飲むのは愚の骨頂、体を温めたいのですから必ずお湯で飲みます(できればお湯に溶かして飲む)。それからしっかり着込むか布団にくるまって汗が出るのを待つ。しばらく待っても体が温まってこなかったら、それは薬が足りていないということ、私ならもう1回2包飲みます。そして汗が出てきたらタオルで拭くなり、着替えるなりして体を冷やさないようにして朝まで眠ります。もし2回飲んでも汗が出てこなかったら、作戦を変えてホットタオルなどで首の後ろを温めて休みます。「食前」って書いてあるからといって、漢方薬を飲んだ後に律儀に食事を摂る必要はありません。食欲がなければ無理に食べなくていいです。でも水分はしっかり摂っておいてくださいね。

④麻黄附子細辛湯の飲み方

これは少し体力が落ちてきた方の風邪のお薬です。高齢になってくると風邪を引いても熱を出す体力もなくなりますが、そんな方に汗をかかせるお薬を飲ませると却って体が消耗して具合が悪くなってしまいます。麻黄附子細辛湯のかかせる汗はじんわり、という程度ですから、汗をかいた自覚がないくらいでちょうどいいです。通常は2包(病院量)で飲みたいですが、体重が30kgしかないおばあちゃんなら1包でもいいと思います。