「バーキンは買えても、腹筋は買えない」——これは現代社会において、物質的な富は容易に手に入っても(バーキンはなかなか買えないそうですが)、真の健康はその人の努力によってしか得られないことを表した言葉です。うまい、、名言ですね。
ブランド品は金銭と引き換えに所有できますが、引き締まった腹筋は、日々の運動、適切な食事、そして何よりも「継続する意志」の賜物です。
この普遍的な真理は、二千年以上もの歴史を持つ東洋医学の思想と深く共鳴します。西洋医学が「病気の治療」に焦点を当てるのに対し、東洋医学は「未病を治す(予防医学)」、そして人が本来持つ「自然治癒力」を高めることを重視します。その根底には、即効性ではなく、時間をかけた体質改善や生活習慣の見直しこそが、真の健康への道であるという哲学があります。
東洋医学において、私たちの身体は「気(エネルギー)」「血(血液と栄養)」「水(体液)」という3つの要素のバランスで成り立っていると考えられています。筋肉を鍛えるという行為は、単に筋繊維を増やすだけでなく、この「気・血・水」の巡りを改善し、全身の生命力を高めるプロセスそのものです。
例えば、筋肉の生成と維持には豊富な「血」が必要です。地道なトレーニングは、血流を促進し、必要な栄養素を筋肉の隅々まで行き渡らせる働きがあります。これは、漢方でいう「補血(ほけつ)」や「活血(かっけつ)」といったアプローチに通じます。また、運動はストレス解消にも繋がり、「気」の滞りを解消する「理気(りき)」作用も期待できます。
漢方薬を服用することも体調管理の一助となりますが、それだけで理想の身体が手に入るわけではありません。当院では、患者様一人ひとりの体質を見極め、適切な漢方処方を行うと同時に、日々の養生、すなわち「食事」「睡眠」「適度な運動」の重要性をお伝えしています。
バーキンを手に入れることは、人生の喜びの一つかもしれません。しかし、自分の身体と向き合い、コツコツと積み上げた努力によって得られる筋肉は、何物にも代えがたい自信と、生涯にわたる健康という「無形の富」をもたらしてくれます。
流行に流されず、自分自身の内なる健康を見つめ直す。「バーキンは買えても腹筋は買えない」という言葉は、私たちに「本質的な価値」とは何かを問いかけてきます。