漢方豆知識
2025.12.29

「自分との小さな約束を守る」という養生

年も押し迫り、1年を振り返ったり、来年の目標を立てたりする時期になりました。今年最後のコラムは、来年をより良い年にするためのヒントになればと思い書いております。

さて、当院を受診される患者さんから、「何となく元気が出ない」「くよくよしやすい」「漠然と不安」といった、病気より一歩手前のお悩みを伺うことがよくあります。西洋医学的な検査では異常がないことが多いですが、漢方ではこれらの症状は「心」と「身体」のバランスが崩れ、体内のエネルギーである「気(き)」の不足や滞りが起こっているものと考えます。

このような不調が持続すると徐々に自己肯定感が低くなり、「肝(かん)」の働き(気の流れをスムーズに保つ役割)が妨げられ、さらに身体の不調を引き起こすという悪循環に陥りやすくなります。

こうした状況を改善するために一つご提案したいのが、自分自身と小さな約束をして、それを守ってみるということです。

例えば、以下のような本当に些細なことで構いません。

「毎朝、起きたらカップ一杯の白湯を飲む」

「毎晩寝る前に、ゆっくりとストレッチをする」

「毎日、1分間その場なわとびをする」

重要なのは、その内容の「大きさ」ではなく、「毎日続ける」という行為そのものです。

なぜ、小さな約束を守ることが自己肯定感につながるのでしょうか。

漢方では、「脾(消化吸収を司り、心身のエネルギーを作り出す源)」が、思考や自信とも深く関わっていると考えます。自分との約束を守ることで生まれる「小さな達成感」は、心の栄養となり、脾の働きを助けます。これにより、新しいエネルギー(気血)が適切に作り出され、停滞していた気の巡りが改善されるのです。

また、「自分を裏切らない」という経験の積み重ねは、自分自身に対する「信頼」を育み、この自己信頼感こそが、自己肯定感の基盤となります。「私は私との約束を守れる人間だ」という確固たる自信は、他者からの評価に一喜一憂しない、安定した心の状態(=気の安定)をもたらします。

大きな目標を立てて三日坊主になってしまうよりも、まずは「これなら絶対にできる」というレベルの「小さな約束」から始めてみてください。それは、日々の暮らしの中で自分自身に優しく寄り添う行為であり、心と身体の健やかさを育むための、何より効果的な「養生(ようじょう)」となります。

小さな一歩が、巡りの良い、活力に満ちた毎日への確かな道筋となります。皆さまの心身のバランスが整い、穏やかな日々を過ごせるよう、当院は来年もサポートしてまいります。

皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。