10月に入った頃からでしょうか、今度は手のこわばりは全くないのですが、右手を使うと中指の第一関節が微妙に痛く感じるようになりました。強く曲げたり、押したりした時に痛むので、できるだけ強く握るような動作は避けたいのですが、お料理や掃除などの家事は思った以上に手の負担が大きく、どうしても力が入ってしまします。それから水を使って洗い物をするときも痛い。右中指を庇っているうちに左の人差し指も痛くなってきました。
これは50歳ごろの指の症状とは全く違いますので、今回は違う戦略で治療を開始しました。まず、気候が冷え始めてからの症状で、かつ水などで冷えると悪化することから、四肢を温める漢方薬が選択肢になります。生薬としては附子など温めて痛みをとる作用があるもの、冷えや湿気による関節の痛みをとる蒼朮も必須。また、私はもともとちょっと筋肉量が少なめのタイプ、指自体に目立つ腫れや変形はない、といったことから桂枝加朮附湯を選択しました。この内服に加えて下記のセルフケアもしながら2週間ほど過ごしたところ、痛みはほぼなくなり快適な日々が戻ってきています。
その他の漢方薬としては、冷えが悪さをするタイプでは大防風湯や五積散がありますし、痛む指に熱感を伴うなら越碑加朮湯、寒熱の影響がないなら疎経活血湯や薏苡仁湯なども選択肢に上がってきます。漢方薬のみでは改善が乏しい場合は、女性ホルモンの補充や鎮痛薬の併用もありうるでしょう。
では、ここからは私も実践した、指に負担をかけないセルフケアの工夫についてご紹介します。
①関節は本来曲がる方向にだけ曲げること
手の全ての指の関節は、手のひら側に曲がるようにできています。まず大切なのはこの方向以外に関節を曲げないことです。例えば人差し指の腹で強くスイッチを押すと、本来とは逆の方向、つまり指が反るよう形になりますね。これは関節に大きな負担を与えるので避けます。また親指や小指は指の腹よりも側面を使うことが多い(ピアノを弾くときのイメージ)ですが、側面からの圧も負担になりやすいので気をつけましょう。スマホの操作を親指で行っている方も要注意ですよ。CM関節(親指の付け根=上から3つ目の関節)に知らず知らず負担が蓄積します。
②痛い関節はできるだけ曲げないこと
痛い関節はなるべくそっとしておきます。ただ。手の指というのは5本連動して動いていますので、治療のためとは言え、ある指だけを曲げずに過ごすのはほぼ不可能。ならば、テーピングなどで強制的に真っ直ぐにしてしまいましょう。使うテープは幅2センチ、伸縮性がなく、かぶれにくい素材のものならなんでもいいと思います。関節を保護する専用のテープも販売されていますが、高額なのでこまめに張り替えにくいのが欠点ですね。テープを貼りっぱなしにすると細菌の温床になりますので注意してください。私はドラックストアに売っている3Mマイクロポアーサージカルテープ・スキントーンを使っていましたが、値段は数百円とお手頃ですし、かぶれず、色も目立ちにくく、水に浸せばきれいにはがれます。おすすめです。
③バイバイの手はしないこと
バイバイの手、つまり、手のひらをワイパーのように左右に振る動作のことです。手首の関節はなんとなく360°可動域がありますが、横方向の動きは苦手で、痛みを誘発しやすくなります。例えばグリップを効かせてトンカチを振るような動作は最悪です。日常の家事の中で最悪のものはフライパンを片手で持ちあげてお皿に料理を移す動作ですね。これはいけません。私は手首痛(CM関節痛)はないですが、予防のために避けるようにしています。
このように関節への負担を軽減しつつ、時にはリラックスして指や関節のストレッチやマッサージをしてください。できれば湯船の中で気持ちがいいと思う範囲でするのがいいですね。
関節に負担をかけ続けると、数年で骨の変形をきたしてきます。ここまで来ると手術をしない限りもとに戻りません。曲がった指には働きものの美しさがありますが、ちょっと老けた感じがして悲しくなることもありますね。気になる方は早めにセルフケア、それでもダメなら一度ご相談ください。