更年期障害
2022.11.23

「胸が苦しい」と「胸脇苦満」

呼吸が苦しい、息をすると胸が痛くなる、息を吸っても酸素が入ってこない、酸素がうすく感じる。そんな患者さんが時々来られます。内科で血液検査をしても、肺のCT検査をしても異常は見つかりません。

診察をした時、そのような患者さんに共通しているのは「胸式呼吸」をしているということです。呼吸には「胸式」と「腹式」がありますのが、まずはここからご説明しますね。

呼吸とは、平たく言うと肺が膨らんだり縮んだりして行う酸素交換のことですが、肺には筋肉がないので自分で膨らんだり縮んだりすることはできません。骨と筋肉からできた胸郭と呼ばれる空間を広げたり狭めたりすることで、他動的に動かされています。

そして「胸式」「腹式」とは、呼吸を「どの筋肉で胸郭を広げているか」で分けた呼び方です。

「胸式」では肋骨と肋骨に間にある肋間筋を使い、「腹式」では胸と腹の間にある横隔膜を使います。

肋間筋ってなじみがないと思いますが、スペアリブならご存知ですよね。骨と骨に挟まれたあの帯状のあばら肉です。この筋肉の動きを想像してみてください。どんなに大きく動かそうと思っても、そんなに広がることはできません。その分息が苦しくなると、首を縮ませてー、肩を上げてー、と本来使わなくてもいい筋肉まで力ませて胸郭を広げようとするため、胸式呼吸を一生懸命すると胸の真ん中が痛くなってきたりします。また、そのような呼吸は交感神経を刺激するため、だんだん動悸がしてきたり、冷や汗が出てきたり、パニックのような症状を引き起こしやすくもなります。この時ですね、吸っても吸っても酸素が入ってこないとか、酸素がうすいとか感じるのは。

一方、腹式呼吸は横隔膜をダイナミックに使った呼吸法なので、上半身を力ませることなくスムーズに大きく肺を広げることができ、横隔膜の動きが副交感神経を刺激してリラックスにつながるとも言われています。

ここで話を漢方に戻しますが、漢方には「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」という概念があるのをご存知でしょうか。左右の肋骨の下、季肋部と呼ばれる部分が固く張り、指を滑り込ませるように入れた時、痛みや不快な圧迫感を感じる症状のことを言います。胸脇苦満はいろいろな原因で起こりますが、心理的なストレスで神経が張り詰めているときにも起こります。

個人的な意見ですが、この胸脇苦満は横隔膜の強い緊張が関係しているのではないかと考えています。息を詰めて仕事に集中し過ぎたり、不安感から体が緊張し続けたりして、うまく呼吸ができていないと、横隔膜が硬くなり起こるのではないかと。そんな患者さんはたいてい胸式呼吸をしています。

なので、最近は酸素がうすく感じる患者さんや胸脇苦満の患者さんには、横隔膜のストレッチ(=腹式呼吸)をお勧めしています。詳しい方法は次回のコラムに書きますが、自分のふだんの呼吸が胸式か腹式はわからない方も多いと思うので、最後に簡単な見分け方をお教えします。

全身がうつる鏡の前に立って大きく深呼吸をしてください。その時に両肩が持ち上がっていたら胸式呼吸をしています。お腹に手を当てて、息を吸った時にお腹が膨らんでいなかったら間違いありません。小さい呼吸では分かりにくいので、深呼吸をして確かめてみてください。