ダイエット
2021.03.02

ダイエット① ー睡眠不足編ー

「漢方薬で痩せますか?」

特に中年以降はダイエットをしても体重が落ちず、そう言って当院にいらっしゃる患者さんもおられます。「生薬の力で内臓脂肪を燃やす!」的なテレビコマーシャルがありますね。多分それをご覧になって来てくださっていると思うのですが、人を対象とした研究では、誰でも飲めば痩せるといった証拠(エビデンス)のある漢方薬はありません。残念ながら。

では、漢方薬を飲んでも絶対やせないのかと言えば、痩せたとお喜びの方もおられます。そもそも痩せるとはどういうことなのか、漢方薬で痩せるのはどんな人なのか、痩せるためのダイエットよりもっと大切な生活習慣とはどんなものなのか、などなど今回から連載していきたいと思います。

 

「同じように食べているのに太る」これが皆さん共通のお悩みなので、まずここから考えていきましょう。この原因を探っていくと、① 睡眠不足、② ストレス、③  運動不足、④ 食べ方が間違っている、に大きく分けられると思います。中年太りとは言いますが、中年は正に①②③にさらされる年代、痩せにくくなるのは当然です。皆さんいくつかの複合的な問題をお持ちですが、睡眠不足からご説明していきましょう。

 

  1. 睡眠不足

睡眠不足が肥満をもたらすことは、さまざまな研究結果から明らかになっています。西洋医学のお話になりますが、睡眠が不足すると食欲を刺激するグレリンというホルモンが増え、食欲を抑制するレプチンというホルモンが減るためと言われています。また、一日の食事のなかで一番睡眠に影響するのは夕食ですが、食欲を抑えられずに夕食を食べすぎたり、夕食の後にお菓子をつまんだりしていると、寝ている間に胃腸が休まらず睡眠の質を低下させます。すると、睡眠中に分泌が盛んになるはずの成長ホルモンが低下し、そのために全身の新陳代謝が低下してしまいます。新陳代謝が低下すると脂肪の分解や筋肉の合成が効率よく行われず、ますます太りやすくなるという負のスパイラルに入るわけです。

できれば1日7時間程度の睡眠時間を確保したいところですが、最低限5時間はきらないようにすること、そして寝る前に胃を軽い状態にして睡眠の質を上げることが重要です。漢方の古典の一つである『黄帝内経』にも「胃和せざれば則ち臥して安からず」とあり、漢の時代から食べ過ぎは不眠の原因として戒められているんですよ。

睡眠不足とダイエットの関係、ご理解いただけたでしょうか。でも、残業が多くてどうしても夕食が遅くなる方、寝付きの悪い方には、漢方薬の出番もあるかなと思います。外食が続いたときなど、食べ物による胃もたれを緩和し、気持ちを落ち着かせて良質な睡眠に誘ってくれる瀉心湯類には、私も助けてもらうことがあります。特に胃もたれで朝食が摂れない方は試す価値ありです。ダイエットに際して朝食を摂るべきか摂らざるべきかは議論の分かれるところですが、少なくとも起きた時に胃もたれしているのは頂けません。朝からお腹が空いて何を食べるか楽しみに起きる、くらいの状態を目指して食事の摂り方を整えていきましょう。(しのぶ)