更年期障害
2020.11.17

更年期障害③ ーホットフラッシュ(漢方編)ー

ホットフラッシュって何?今回は漢方の視点から考えます。

 

人の体温はだいたい36-37度くらいです(たまに35度台という方もいらっしゃいます)が、いずれにしても人は常に熱を産生してこの体温を保ち続けています。ホットフラッシュとは、「ホット」というくらいで熱の過剰なわけですが、これには以下3つの機序が想定されます。

①体が何らかの理由で熱を産生し過ぎる

②体温の恒常性が保ちにくく、ちょっとしたことで温まり過ぎたり冷え過ぎたりする

③熱の原因が外から入ってくる

ここで③は熱中症などのお話なので、更年期とは関係ありません。①②に絞ってご説明していきましょう。

①の熱産生過剰とは、前回西洋医学編でご説明したような交感神経の過剰な興奮や脂肪分の多い食べ物、辛い食べ物、アルコールなどによってもたらされます。緊張して顔がカーッと熱くなったり、辛いものを食べて汗をかいたり、一時的な熱産生の過剰はありふれた反応で想像しやすいかなと思います。一方、②は漢方独特の考え方なので少し難しいかもしれません、屋外に置いた水を例にご説明してみますね。

よく晴れた日に2Lのペットボトルと350mlのペットボトル、それぞれに水を入れて外に置いておきます。すると、2Lのボトルの水はなかなか温まりませんが、350mlのボトルの水はすぐに温かくなってしまいます。この水を体内の水分と考えると、体内の水分量がしっかり確保されている人の体温はちょっとしたことには影響されませんが、水分量が少ない人の体温は変わりやすいことが分かりますね。体の水分量は年齢によりだいたい決まっていますが、実は筋肉量によって差がついてきます。つまり、筋肉の少ない人は体内の水分量が少なく、体温の恒常性を保ちにくいということです。このような体質を漢方では「陰虚」と言い、陰虚の人がちょっとしたことで熱過剰になった状態を「虚熱」と言います。

説明が長くなりましたが、まとめるとホットフラッシュの熱には上記①②の2種類があり、漢方用語では、①の熱は「実熱」、②の熱は「虚熱」と言います。また、2つに分けたものの、ホットフラッシュは実熱か虚熱のどちらか一方ということはなく、人によって実熱7:虚熱3だったり、実熱2:虚熱8だったり、体質や環境によってさまざまです。ここの見極めによって治療に使う漢方薬は違ってきますから、漢方家の腕の見せどごろとも言えますね。

今回はとても抽象的なお話しになってしまいましたが、実熱と虚熱はとても大切な概念なので憶えておいてください。次回はより具体的なお話に入っていきます。(しのぶ)