漢方豆知識
2026.05.21

汗をかく意味 ー気象病に備える養生ー

季節の変わり目や梅雨の時期になると、急な頭痛やだるさ、めまい、耳鳴りに悩まされる方が一気に増えます。「なんだか気分が塞ぐ」「よく眠れない」といった、メンタルの不調を訴える方も少なくありません。

これらは決して気のせいでも、気の持ちようのせいでもありません。最近メディアなどでもよく耳にするようになった「気象病(天気痛)」という立派な身体のサインです。

漢方ではこの気象病の原因を、「水毒(すいどく)」と捉えます。要するに体内の水分代謝が滞り、あちこちで水分が渋滞を起こしている状態ですね。

この水毒を解消し、天候の変化に振り回されない健やかなカラダを作るために、今からぜひ準備していただきたいこと。

それが、「汗をかくこと」です。

なぜ今、私たちに汗が必要なのか。順を追ってお話しさせてください。

気象病の正体は、体内の「水浸し状態」

漢方では、自然界のジメジメした湿気(湿邪)が体内に侵入すると、余分な水分が溜まりやすくなると考えますが、これは現代科学の視点で見ても、とても理にかなっています。

まず、気圧が低下すると、私たちの血管は拡張します。すると血管から水分がジワリと染み出し、局所的な「むくみ」を引き起こすんですね。このむくみが脳の血管を圧迫すれば頭痛になりますし、耳の奥にある内耳がむくめば、めまいや耳鳴りを誘発することになります。

つまり、気象病の正体とは、体内で起きている水分処理のキャパオーバーなのです。

では、この溜まってしまった余分な水分を外へ逃がすには、どうすればいいか? 最も自然で効果的なルートが、皮膚の毛穴から出す「汗」です。

普段から適度な運動や入浴で汗をかく習慣がある方に、気象病はありません。皮膚の「発汗センサー」が正常に働いていて、気圧や湿度の変化を察知すると、体が自動的に水分をスムーズに排泄してくれるからです。

根本解決のために、今からできること

一方で、エアコンの効いた快適な部屋で過ごす時間が長く、汗をかく習慣が途絶えてしまっている方は注意が必要です。発汗センサーが休止状態になり、水分をどんどん体内に溜め込んでしまうため、天候の崩れと共に症状が出やすくなってしまいます。

このようなとき、内科などでもよく処方されるようになった「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬を服用するのも、選択肢として有効です。

しかし、一歩進んで根本的に解決するためには、やはり日頃からウォーキングをしたり、湯船にしっかり浸かったりして、「自力でじわっと汗をかく力」を養っておくことが何より大切です。

仕込むなら、梅雨前の今がラストチャンス

ちなみに私自身は、梅雨が本格化するまでは、あえてエアコンを使わず、しっとりと汗をかいて過ごすように意識しています。梅雨に入ってしまうと、今度は外の湿度が高すぎて余計に汗をかきにくくなってしまうから。カラダを夏仕様に変えるなら、まさに今がラストチャンスなのです。

というわけで、当院の診察室、最近は「おや、暑いな」と感じられるかもしれません。ですが、これも皆さまの「発汗センサー」を呼び覚ますための、ちょっとした作戦だとお付き合いいただけますと幸いです。

お互い、体内の余分な水分をすっきりと排泄して、これからの季節を快適に乗り切っていきましょう。