頻尿
2023.02.26

頻尿対策②  ー夜間頻尿ー

今回は夜だけ頻尿になるケースのお話をします。

日中は2-3時間トイレに行かなくても平気なのに、夜寝ている間に4回もトイレに起きるという方がいらっしゃいます。なぜこのようなことが起こるのか、原因は大きく分けて2つあると思います。一つは睡眠の質の問題、もう一つは日中のむくみ。順番にお話ししていきます。

まず、睡眠の質の問題から。女性の場合は特に閉経が近づいてくると夜中に体が熱くなったり、寝汗をかくことが増えたり、それはなくてもとにかく夜中に目が覚めると朝まで悶々と寝られなかったり、いろいろな問題が増えてきます。これを漢方的に捉えると、年齢による陰虚の進行が虚火をもたらし、心身を煩わせている状態と言い換えることができます。体は痩せ気味で、日中はむしろ冷え性の方に見られやすい症状です。寝るときに動機を感じやすかったり、夢ばかり見ている感じがしたりすることもあります。

このような方は、日中はなんともないのに、夜寝ている間だけ突然の強い尿意や膀胱の不快感を感じやすくなる場合があります。それでトイレに行ってみてもたいして尿は出ず、数時間するとまたトイレに行きたくなり、を繰り返します。

この状態をセルフケアでカバーするのは中々難しいかもしれませんが、トイレに行きたくなっても少し我慢するのは一つの方法です。そもそも膀胱にはたいして尿は溜まっていませんので、しばらく我慢していると尿意が遠のいていく可能性があります。たいした尿量でなくても一旦出してスッキリしても良いのですが、トイレに行く行為そのものが頭を覚醒させてしまい、その後寝付きにくくなってしまうことがあります。また、体に「夜に起きる」という行為を覚えさせてしまうと、それが習慣化され固定してしまう可能性があります。「尿意は一旦無視」ぜひトライしてみてください。

治療についてですが、このような頻尿で泌尿器科を受診された場合は過活動膀胱と病名がつき、排尿に関する自律神経を調整するお薬が処方されます。それでも改善しない場合は、睡眠薬が処方されたりもしますが、更年期に関する多様な症状をお持ちの場合はホルモン補充療法も選択肢です。漢方薬で治療する場合は、虚火を鎮めるお薬や陰虚を補うお薬などを用いていきます。

そしてもう一つの問題、日中のむくみ。日中に摂った水分を正常に循環させることができないと、体に不要な水を貯めたまま寝ることになります。不要な水は重力に従って日中は膝下にむくみとして溜まっていますが、布団で体を横にするとその水が血管の中に戻り、夜間の尿を増やす原因になります。このような方の夜間頻尿は、尿量がしっかりあることが特徴です。夜トイレに行くたびに日中と同じくらい尿がでる方は、こちらのタイプです。

対策としては日中の水分循環を正常にすること、これに尽きます。具体的には塩分を控えること、座りっぱなし、立ちっぱなしを避けることが大切です。仕事上座りっぱなしなどが避けられない方は、着圧ソックスを試すとか、ちょっとした時間にふくらはぎを鍛える運動をするのがおすすめです。食事ごとに歯磨きをされると思いますが、この時間に踵を上げ下げする運動をするのもいいと思います。案外3分続けるのも大変なんですよ。今日からやってみてください。あと、食後に横になれる環境の方は、10分でも良いので足を高くして休んでみてください。それだけでも足に溜まった水を血管内に戻す効果があります。

このような対策をとってもむくみが解消しない場合は、水の分布を整える漢方薬を考えます。日中のいらない水は日中のうちに出す、そこが目標です。ですので、あまり夜遅く飲んでも効果が期待できません。夜の内服は必ず夕食前、できれば18時くらいに済ませてください。