2023.01.29

ドライアイ ー原因は陰の不足で良いのか?ー

パソコンやスマホを使って目を開きっぱなしになって、涙が乾いて目がシバシバ。ドライアイってそういうものだと思っていました。でも、最近いろいろ調べてみたら、そればかりじゃないんですよね。今回は最新のドライアイの話題と対応策についてお話ししたいと思います。

まず、ドライアイの原因は大きく分けて3つあります。

  1. 涙の分泌が少ない
  2. 涙が蒸発しやすい環境
  3. 涙の蒸発を防ぐ油成分の減少

 

1. 涙の分泌が少ない。これは、原因としては一番少ないものですが、「シェーグレン症候群」という涙腺が炎症により機能不全を起こす病気が知られています。この病気は唾液腺の炎症も同時に起こすので、唾液が減ってものを飲み込みにくくなったり、虫歯が増えたりといった症状を伴うのが特徴です。目が乾くだけでなく唾液の減少も感じられる場合は、一度内科(できれば膠原病内科)を受診なさってみてください。

2. 涙が蒸発しやすい環境。パソコン業務、エアコンなどの空調、コンタクトレンズの長時間使用が主な原因と言われていますが、ここにも実はコロナ禍が。メガネをしている方はマスクのためにレンズが曇ってしまう経験ありますよね。レンズが曇るのは、吐いた息がマスクの隙間から漏れて上にあがっているからですが、その息は眼球も直撃し涙を蒸発させています。ここ2-3年で急にドライアイを感じるようになった方、鼻の密着にこだわったマスクに変えてみると良いかもしれません。

3. 涙の蒸発を防ぐ油成分の減少。これってあまり知られていませんが、上下のまぶたにはマイボーム腺という油成分を分泌する腺が20-25本ずつついており、ここから分泌された油分が眼球に潤い膜をはることで涙の蒸発を防いでいます。

油分が上手く分泌されない状態をマイボーム腺機能不全(MGD)と言いますが、疫学調査からドライアイの約86%はMGDが原因であることが明らかになっています。MGDをもっと簡潔に言うと、油を出す出口が詰まっている状態ということですが、アイメイクのメイク残りが出口を詰まらせることがあるので要注意です。特にインラインやまつげエクステをしている方はクレンジングをしっかりしましょう。

ただ、日本人のMGD有病率は30~50%というデータもあり、アイメイクをしない方も安心はできません。運動量が少ない人ほどドライアイが多いというデータと組み合わせて考えると、いわゆるメタボの人ほどMGDになりやすい傾向がありそうです。油の出口詰まりといえばニキビが思い浮かびますが、ニキビと同様に揚げ物など脂質の多い食べ物を避けることが、マイボーム腺を詰まらせないための対策になるかもしれません。その他一般的にはマイボーム腺をふさぐ栓が溶けやすいように、目元を温めてから専用のクレンジング剤で洗浄することが勧められています。ご興味がある方は「リッドハイジーン」で検索してみてください。

漢方ではドライアイというと陰を補う治療が試みられてきた歴史がありますが、油が詰まらないようにする(湿熱を瀉す)治療も試みる必要がありそうです。これからはそういう目でも診察していきたいと思います