感染予防
2022.02.03

感染予防の漢方③ ー漢方薬の効かせる飲み方ー

風邪ウイルスの侵入を阻止するためには、一時的な体温の上昇が必要というお話をシリーズの初回でさせて頂きました。今回は、そのタイミングで用いる漢方薬についてお話します。

が、その前に、身近な病気でありながら誤解も多い「風邪」について少しご説明します。

風邪というのはそのほとんどがウイルスによって引き起こされます。一般的に多いとされるのはライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどですが、全部で200種類以上あると言われています。新型コロナウイルスはただの風邪を起こす程度だったコロナウイルスが、変異して肺炎や全身に及ぶ重篤な症状を起こすようになったために現在特に注目されているわけです。

そして薬局などによく総合感冒薬が売られていますが、これは風邪の原因のウイルスを殺したり、封じ込めたりするお薬ではありません。普通の風邪は元気な人であれば自然に治るものなので、いちいち病院にかかって何のウイルスが原因か調べる意味がないし、それぞれのウイルスに対抗する薬を作ったところで売れもしないので製薬会社は開発をしません。

ちなみに、ここで一つ例外なのがインフルエンザウイルスですね。インフルエンザは風邪症状を起こすウイルスの中でもたまに重症化して命を奪うことがあるので、インフルエンザかどうか判定するための検査が開発され、ワクチンが開発され、治療薬が開発されてきました。

さて、話をもどして、総合感冒薬の目的は風邪の症状である発熱や頭痛、鼻水などを緩和することです。ですからどんなウイルスが原因であれ効果はありますが、ウイルスを殺して早く治す力はありません。いわば受け身のお薬です。昔「早めのパブ○○」というコマーシャルがありましたが、大切なのは薬を飲むことではなく早めに体を休めることでした。

一方、漢方薬は攻めのお薬ということができます。風邪のウイルスが体の奥に侵入する前に体温を上げてウイルスを撃退する力があります。風邪のとき薬がなくても熱は上がりますね。これはウイルスを撃退するために備わった生理的な反応ですが、この反応を助けることで一気に風邪を治してしまうのが漢方薬の戦略です。逆から言えば、風邪の漢方薬は体温が上がるように飲まなければ意味がありません。

風邪のときもすぐ当院を受診して頂ければ、適切なお薬を処方して、適切な飲み方を指導させて頂くのですが、完全予約制である関係上、なかなかそういったご対応ができません。そこで今回は、非常にざっくりとですが、薬局で市販されている漢方薬を使った対処法をご説明します。

①漢方薬を飲むタイミング

背中がゾクゾクっとした時です。皮膚がザワザワする、首筋から筋肉がキュッと固まる、熱が出そうな予感がする、喉が引っかかる感じがある、そのくらいの症状でもう飲んでください。咳や鼻水、頭痛など風邪の典型的症状がなくても構いません。風邪かどうか迷ったら飲む、という位の前のめりな態度でいいと思います。もし、体を温めようとお風呂に浸かってもまだ寒い、というときは迷わず飲んでください。

②漢方薬の選び方

ドラッグストアでよく見かける風邪の漢方薬は、麻黄湯、葛根湯、小青龍湯でしょうか。気の利いたところなら麻黄附子細辛湯や桂枝湯もありますね。

どの薬を選ぶか本当は明確な判断基準があるのですが、ややこしくなるので思い切って省きます。

子供→麻黄湯

大人→葛根湯

高齢者→麻黄附子細辛湯

寒気がした日はこれでいいです。

大人って何歳から何歳?とか細かいことは気にしなくていいですが、もう一少し付け加えるなら、

ふだんから元気でよく食べて疲れ知らずだ→麻黄湯

元気いっぱいというほどじゃないけど体力はある→葛根湯

体力の衰えを感じることが多い→麻黄附子細辛湯

という基準も併せて考えてください。そして、一番大切なのが飲み方です。これは薬によってちょっと違うのでそれぞれ説明します。

③麻黄湯・葛根湯の飲み方

薬局でこれらの漢方薬を見つけたら、成分表示を確認してください。どちらも麻黄という生薬が入っていますが、これが2gとか2.5gと書いてあったら、それは病院で出す漢方薬の半量で作られた商品です。いろんな事情でそうなっているのでしょうが、一晩で風邪を治す、という今回の趣旨からすると用法どおりに飲んでも…。私ならまず1回分として倍量(病院での処方量)で飲みます(お子さんの場合は年齢に応じた量の病院処方量で)。

市販の漢方薬の用量用法の欄には「1日2包を食前に水かお湯で服用」と書いてあります。これもちょっと…。私が飲むなら「ゾクっと来たときに2包(病院処方の1回分)、30−40分待って汗が出てこなかったら、もう2包追加。必ずお湯で服用」です。

風邪の漢方薬は期を逃さずに体温が上がって汗をかくまで飲む、これがキモですから、食前とか気にしないで一度に2包飲みます。水で飲むのは愚の骨頂、体を温めたいのですから必ずお湯で飲みます(できればお湯に溶かして飲む)。それからしっかり着込むか布団にくるまって汗が出るのを待つ。しばらく待っても体が温まってこなかったら、それは薬が足りていないということ、私ならもう1回2包飲みます。そして汗が出てきたらタオルで拭くなり、着替えるなりして体を冷やさないようにして朝まで眠ります。もし2回飲んでも汗が出てこなかったら、作戦を変えてホットタオルなどで首の後ろを温めて休みます。「食前」って書いてあるからといって、漢方薬を飲んだ後に律儀に食事を摂る必要はありません。食欲がなければ無理に食べなくていいです。でも水分はしっかり摂っておいてくださいね。

④麻黄附子細辛湯の飲み方

これは少し体力が落ちてきた方の風邪のお薬です。高齢になってくると風邪を引いても熱を出す体力もなくなりますが、そんな方に汗をかかせるお薬を飲ませると却って体が消耗して具合が悪くなってしまいます。麻黄附子細辛湯のかかせる汗はじんわり、という程度ですから、汗をかいた自覚がないくらいでちょうどいいです。通常は2包(病院量)で飲みたいですが、体重が30kgしかないおばあちゃんなら1包でもいいかもしれません。これも飲むときに食前にこだわる必要はありません。食の細い方だと食前に飲むと気持ち悪くなることもあるので、あえて食後に飲むのもありです。必ずお湯でお願いします。