感染
2022.01.31

感染予防の漢方① ー冷え性を治すー

新型コロナウイルス感染症がまた猛威を奮っています。オミクロン株は重症化リスクが低いと言われていますが、クラスターなどに巻き込まれれば社会生活に大きな影響が出ますから、特に受験生を持つ親御さんなどは気が気でないこととお察しします。今回は漢方から見た新型コロナウイルス感染予防について考えてみたいと思います。

感染症予防のための漢方薬として補中益気湯や十全大補湯が一時話題になりました。これらが免疫を活性化させるという論文などが引用されてのことですが、個人的には盲目的に誰でも飲んで効く、というものではないと思っています。私自身そのような飲み方はしません。

コロナにしろ風邪にしろ、社会生活を営んでいる限りはウイルスと出会うこと自体は避けられないかもしれません。大切なのはウイルスが体の中で増殖して、咳や痰などの呼吸器症状を起こしたりだるくて起きられない、といった状態にまで発展させないことです。

体に入ったウイルスを排除する最強の手立ては、一時的にグッと体温を上げること。この一択です。風邪っぽくて喉がイガイガするな、寒気がするな、という時にしっかり体温を上げることができれば、翌日にはウイルスが排除されスッキリしています。反対にこのタイミングを逃してしまうとダラダラと感染が長引いて、いつまでも咳が止まらなくて外出もできない、ということになりますのでご注意を!

寒気がする夜に体温を上げるには、いくつかコツがありますので今回から3回に分けてそのお話をします。

まず、いざという時に体温を上げられる状態を作るには、日頃の備えが大切です、というお話。つまり、冷え性を治しておくことです。実際、冷え性の方のなかには「風邪をひきやすくて困る」という方が多くおられますね。冷え性を治す方法はいつも患者さんにしつこく言っているとおり、①筋トレ、②タンパク質摂取、③毎日風呂に浸かる。これに尽きます。これらは1週間でも続ければ効果が出てきますので、今日から始めてほしいことです。

また、タンパク質摂取については誤解している方が多いので少し詳しくご説明させてください。タンパク質の必要量はざっくり体重1kgあたり1gです。体重50kgの方なら50gですね。一番多い誤解は、毎日納豆と卵を食べているからタンパク質が足りているというもの。納豆も卵も優れた栄養をもつ食品ですが、1日の必要量を補えるほどではありません。納豆は大抵40gのパックで売られていますが、1パック当たりのタンパク質は6〜7gくらいですので、1日に3パック食べたとしても20g前後にしかなりません。卵も1個50g当たりのタンパク質は6gくらいです。

1日50gを目指す時は、動物性のタンパク質を摂るのが手っ取り早いです。お魚県である富山県民としては、美味しいお魚を毎日でも食べたいところ。でも、煮魚や焼き魚はあと始末が面倒でなかなか・・、ということはありますね。その場合は、手間をかけずに食べられるしらす干しやツナ缶、魚肉ソーセージなどを取り入れるのも一手です。また、体調の良い時であれば生ものもOKですから、富山の安くて美味しいお刺身をプラスするのも良いですね。

冬は寒くて食欲がわかず胃腸の調子を崩しがち、魚も肉も食べられない、という方は生姜やネギなどの香味野菜を上手に取り入れるのも効果的です。それでもなかなか温まらないという場合は、人参湯などお腹を温める漢方薬がいいと思います。先に触れた補中益気湯や十全大補湯はいずれも人参湯をベースにいろんな生薬を足したお薬で、もちろんそれが効く方もいらっしゃいますが、私はシンプルな人参湯が飲みやすく続けやすくていいんじゃないかと思っています。