漢方豆知識
2021.09.23

生理痛③  ー当帰芍薬散ー

漢方を勉強し始めた頃に「当芍美人」という言葉を聞いてときめきましたが、どう考えても自分には当てはまらず大いにがっかりしたものでした。

「当芍美人」とは当帰芍薬散が効く方の見た目を表現した言葉で、色白・痩せ型の容姿を指すと言われます。私に言わせれば、一言「可憐」。華奢な体型もさることながら、少しはにかんだように小声で話す様子が可愛らしい方。有名人で言えば、黒木華さんのようなイメージです。

当帰芍薬散の主薬である当帰は血を補う生薬で、生理痛に効くだけでなく、生理が2ヶ月毎にしか来ないとか、3日間で終わってしまうとかいう場合に周期を整える効果もあり、生殖機能を成熟させる力もあると考えられます。したがって、10代から20代、比較的若年層の生理痛に用いることが多いですが、不妊症の治療でも活躍します。また、芍薬とともに子宮の筋肉を温め緩ませて痛みをとる効果があり、元々冷え性の方によく合います。

ついでにお話しすると、当帰と芍薬が入ったお薬で生理痛によく用いるものに当帰建中湯があります。「朝だるい」のコラムでも紹介した小建中湯に当帰を加えたお薬ですが、生理痛がひどい上に朝なかなか起きられず学校を休みがち、便秘症でよくお腹が痛くなる、となれば当帰芍薬散より当帰建中湯の出番となります。

お薬の名前には入っていませんが、当帰芍薬散に含まれる茯苓・朮・沢瀉は、水を巡らせ不要な水分を尿から排泄させる3点セット。生理の前に浮腫みやすくなるのは女性のあるあるですが、生理と関係なくいつも浮腫みやすくて困るという方、特に冷えを伴う方には一つの選択肢になります。ちなみに、先述の当帰建中湯にはこの3点セットは入っていません。二つのお薬の適応を見分けるとき、ぽちゃぽちゃとした水っぽい肉質の方は当帰芍薬散、しまって緊張が強い肉質の方は当帰建中湯、というのもある程度目安になります。

 

冒頭で「当芍美人」の可愛らしさを語りましたが、このお薬が女性専用かと言えば否で、肩こり+冷え性+浮腫の男性で、当帰芍薬散が手放せないという方がいらっしゃいます。反対に「これぞ当芍美人」という方で、まったく違うお薬の適応になる方もいらっしゃいます。もし当院で当帰芍薬散を処方されなくても、どうぞ誤解のありませんように…。