更年期障害
2023.09.21

子宮筋腫とのつき合い方

幼い頃から風邪くらいしか病気をしたことがなかったのに、30歳代~40歳代になり、急に「子宮筋腫」なんて病名がつくと、ちょっと焦りますね。健康感が揺らぎます。

「あー病気になってしまった。なんとか治したい。病気じゃなかった自分に戻りたい」そう考えてしまいますが、子宮筋腫は30歳以上の女性の過半数に存在しており、まあ、それ自体は病気ではなく、ある種加齢性の変化であると言ってもいいと思います。

問題なのは子宮筋腫に伴って出てくる症状の方であって、症状がなければあまり重く考える必要はありません。子宮筋腫はあくまで良性のものです。ただ、急に大きくなる場合や不正出血を繰り返す場合は、「見た目は子宮筋腫だったけど、実は悪性腫瘍だった」ということがあり得ます。このため産婦人科で子宮筋腫と診断された時には、経過観察のためまた来てください、ということになります。

 

さて、ここから本題ですが、子宮筋腫に伴なって起こり得る症状について順にお話ししていきます。子宮筋腫自体が良性とはいえ、下記の症状を伴う場合は治療対象になってきます。

 

①過多月経(貧血)

②月経痛

③圧迫症状(頻尿)

④不妊

 

①過多月経(貧血)

子宮筋腫があると、月経に伴う出血が非常に多くなることがあります。どこからが「過多」なのか、経血の量を測ることはできませんが、「3日以上続けて昼に夜用ナプキンを使う」「昼用ナプキンが1時間もたない」ということが続けば多いと思ってください。また、元々7日間だった月経が10日間以上続く、というような場合も「過多」と考えます。

血液検査ではヘモグロビン量が11g/dL以上なら一般的に貧血とは言いませんが、詳しく調べると鉄分不足になっている女性は少なくありません。鉄不足は貧血だけでなく、不眠、コラーゲンの減少、免疫力低下など全身の不調につながります。また、鉄不足が改善することで月経周期が安定したり、月経痛が軽くなる方もいらっしゃいますので、当院では経血を少なくする漢方薬のほか、鉄剤の内服をお勧めすることもあります。

漢方薬で経血がコントロールできず貧血が続く場合には、ホルモン剤あるいは手術といった治療が視野に入ってきますので、産婦人科へご紹介しています。

 

②月経痛

子宮筋腫で出血が多いと、これに伴って痛みの方も強くなってきます。1回の月経で1錠痛み止めを飲むくらいならいいのですが、2日以上痛み止めが必要なら治療をお勧めします。月経痛は漢方薬の得意とする分野で、数ヶ月~1年くらい内服するとやめた後も快適に過ごせる方が多い印象です。

 

さて、①過多月経(貧血)と②月経痛は漢方薬が奏功することが多いのですが、③圧迫症状(頻尿)④不妊の原因になっている場合は、早めに産婦人科で相談されることをお勧めします。

 

③圧迫症状(頻尿)

3㎝4㎝なんていうのはかわいいもので、子宮筋腫も成長するとハンドボール以上の大きさになることがあります。こうなってくるとお腹に赤ちゃんがいるようなものですので、大きくなった筋腫や子宮に他の臓器が圧迫されて、頻尿になったり片足だけ浮腫んだりといった症状が出てくる場合があります。子宮筋腫はエストロゲンというホルモンが分泌されている限り成長し続ける運命なので、漢方薬で逆に小さくするということはとても難しいと感じています。

閉経すれば子宮筋腫は小さくなりますので、50歳くらいになっていれば閉経を待つという選択肢もありますが、40歳代までであれば産婦人科を受診してみてください。

 

④不妊

子宮筋腫の全てが不妊の原因になるわけではありませんが、できた場所によっては問題になることがあります。不妊治療は時間との勝負という面もありますので、この場合には漢方薬より手術(筋腫核出術)が優先されるかなと思っています。

 

以上、子宮筋腫への対応をまとめました。結論としては、産婦人科での経過観察は続けつつ、どう対応するかは症状により選択する、ということになりますね。過度に恐ることなく、うまくつき合っていきましょう。